【事例で解説】
ハラスメントとコンプライアンス違反の違いと関係性

近年、企業におけるハラスメント対策は早急に対応すべき課題の一つとなっています。「ハラスメント=コンプライアンス違反」と安易に考えていませんか? 実は、両者の間には明確な違いがあり、その違いを正しく理解することが、効果的なハラスメント対策には不可欠です。本記事では、ハラスメントとコンプライアンス違反の違いを具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。

1.ハラスメントとコンプライアンス違反の違いとは?

まずは、それぞれの言葉の定義を確認し、両者の違いを明確化していきましょう。

1-1.コンプライアンスとは何か?

コンプライアンスとは、単に「法令遵守」を意味するものではありません。「法令遵守」に加え、企業倫理、社内ルール、社会規範などを含む幅広い概念を指します。

法令遵守: 国家が定めた法律や条例などを守ること。
企業倫理: 企業が自発的に定めた行動規範や倫理基準を遵守すること。
社内ルール: 就業規則や服務規程など、企業が独自に定めたルールに従うこと。
社会規範: 社会通念上、求められる行動やマナーを守ること。

企業は、これらの要素を総合的に判断し、倫理的に問題のない行動を心がける必要があります。

1-2.ハラスメントとは何か?

ハラスメントとは、「嫌がらせ」を意味し、法律で下記のように定義されています。

パワーハラスメント(パワハラ)
優位な立場を利用した、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で、労働者の就業環境が害されるもの。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)
性的な言動によって、労働者の就業環境が害されるもの。

マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠・出産・育児休業などを理由とした、労働者の就業環境が害されるもの。

ハラスメントは、個人の尊厳を傷つけ、働きがいを損なうだけでなく、企業にとっても訴訟リスクや組織崩壊に繋がる重大な問題です。
より詳細なハラスメントの定義と種類については、下記の記事をご確認ください。

【2024年最新版】ハラスメント・パワハラ問題への正しい対策方法とは?定義・種類から企業ができる対策まで徹底解説!

2.ハラスメントとコンプライアンス違反の関係性

ハラスメントとコンプライアンス違反は、密接な関係があります。ハラスメントは、法律で禁止されている行為であり、コンプライアンス違反の一つとして位置づけられます。一方で、すべてのコンプライアンス違反がハラスメントに該当するわけではありません。例えば、情報漏洩やインサイダー取引などは、コンプライアンス違反ですが、ハラスメントには該当しません。

2-1.【具体例で比較】ハラスメントとコンプライアンス違反の違い

具体的な例を挙げて、ハラスメントとコンプライアンス違反の違いを、それぞれ票で比較してみましょう。
ハラスメントとコンプライアンス違反の違いの表

2-2.類似点と相違点

類似点と相違点の表

2-3.法的枠組みの違い

法的枠組みの違いの表

3.ハラスメントがコンプライアンス違反になるケース

具体例と法的解釈を通じて、ハラスメントがコンプライアンス違反となる過程とその影響を説明します。

具体例
ある企業では、上司による部下へのパワーハラスメントが長期間にわたり続いていました。具体的には、過度な業務ノルマを課し、達成できない場合は人格を否定するような発言を繰り返していました。この問題が外部からの内部告発を通じて明るみに出ました。
このケースでは、企業のコンプライアンス規程には「すべての社員が尊重され、快適に働ける職場環境を提供する」と明記されていました。しかし、それに反する行為が見過ごされていたことから、企業は直ちに内部調査を行い、経緯を評価しました。結果として、上司の行動は企業のコンプライアンス違反と判断され、内部規程に基づいてしかるべき処分が下されました。

法的解釈
この事例における法的解釈では、職場のハラスメントが企業のコンプライアンス違反にあたる理由が明確にされました。企業は従業員に対し、安全で尊重し合う職場環境を提供する法的義務があるため、その義務を果たさない場合、労働基準法や労働契約法に基づき法的責任を問われる可能性があります。さらに、この種のハラスメントが長期間にわたって行われていた場合、企業は不作為の責任を問われることもありえます。この事例は、ハラスメント対策が単なる倫理的な問題ではなく、法的な義務であることを企業に再認識させたと言えるでしょう。

4.コンプライアンス違反が発生した場合のリスク

コンプライアンス違反が発生した場合に企業が直面するリスクについて詳しく見ていきましょう。

4-1.損害賠償請求のリスク

企業は、従業員に対して、安全で健康に働くことができる職場環境を提供する義務があります(安全配慮義務)。 ハラスメントが発生した場合、企業は安全配慮義務を怠ったと判断され、損害賠償責任を負う可能性があります。
ハラスメントを受けた従業員は、企業に対して精神的苦痛に対する慰謝料や、休職による収入減などの損害賠償を請求することができます。 近年では、高額な賠償金が認められるケースも増加しており、企業にとって大きなリスクとなっています。

4-2.企業イメージの低下

ハラスメント問題が公になれば、企業イメージやブランド価値が大きく損なわれる可能性があります。 一度失った信頼を取り戻すことは容易ではなく、企業の業績悪化に繋がる可能性も否定できません。

4-3.採用活動への影響

ハラスメントが多い企業というイメージが定着すると、優秀な人材の確保が難しくなります。 求職者にとって、働きやすい職場環境は重要な選択基準となっているため、企業はハラスメント対策に真剣に取り組む必要があるでしょう。

5.企業が取るべきハラスメントとコンプライアンス違反の防止策

企業は、ハラスメントとコンプライアンス違反を防止するために、以下の対策を講じる必要があります。

5-1.社内体制の整備

ハラスメント防止に向けた社内体制の整備には、いくつかの重要な取り組みがあります。
まず、ハラスメントの定義、禁止行為、相談窓口などを就業規則等に明記し、ハラスメント防止規定の策定・明文化をします。
次に、相談窓口の設置が重要です。社員が気軽に相談できる環境を整えるとともに、ハラスメントに関する専門知識を持つ相談員を配置し、体制を万全にする必要があります。
さらに、社内通報制度も同様に、ハラスメントの発生を目撃した場合など、誰でも安心して通報できる体制を構築し、被害者や目撃者が適切に声を上げられるような環境を整えることが大切です。

5-2.効果的な研修の実施

効果的な研修の実施においては、従業員と管理職それぞれに対して正しい内容を提供することが重要です。まず、従業員向けの研修では、ハラスメントの基礎知識をはじめ、実際の事例を通じた対応策の理解、そして相談窓口の利用方法などを知らずに周知することが求められます。これに加えて、部下からの相談に正しく対応するスキルや、ハラスメントを防ぐための指導方法についても習得させ、管理職がリーダーシップを発揮して健全な職場環境を維持できるように目指します。

5-3.発生時の迅速かつ適切な対応

ハラスメントが発生した場合、まず最初に必要なのは事実関係の迅速な確認です。企業は客観的な立場から、当事者双方に対して聞き取り調査を行い、正確な状況把握に努めます。この過程では、被害者のプライバシーを保護することが何より重要です。企業は適切な配慮のもとで対応し、被害者が安心して報告できる環境を提供します。事実が確認された後は、加害者に対する適切な処分が求められます。必要に応じて懲戒処分を行い、企業としての責任を明確にします。そして、同じ問題が再び発生しないように、再発防止に向けた研修や職場環境の改善に取り組むことが不可欠です。

5-4.コンプライアンス意識の向上

企業におけるコンプライアンス意識の向上は、まず経営トップからのメッセージ発信から始まります。トップ自らがハラスメント防止とコンプライアンス遵守の重要性を強調することは、組織全体に対して強いメッセージを送ることになります。加えて、社内広報活動も効果的な手段です。例えば、職場内にポスターを掲示したり、社内報でハラスメントに関する情報を定期的に発信することにより、従業員の意識を高めることができます。さらに、定期的なアンケート調査を実施することも重要です。この調査を通じて従業員の意識を把握し、問題点が見つかった場合は、速やかに改善策を検討し実行していくことがコミュニケーションの改善に寄与します。

6.企業事例で学ぶ:成功と失敗

ハラスメントとコンプライアンス違反に関する企業の取り組み事例を紹介します。成功事例と失敗事例を通じて、ハラスメントとコンプライアンス違反への対応について学びましょう。

6-1.成功事例:A社の事例

A社は、ハラスメント防止とコンプライアンス徹底に力を入れている企業です。同社では、以下のような取り組みを行っています。

 ・役員・管理職向けのハラスメント防止研修を年1回実施
 ・全従業員向けのコンプライアンス研修を年2回実施
 ・社内・社外の相談窓口を設置し、周知徹底
 ・ハラスメント防止規程とコンプライアンス規程を整備し、定期的に見直し
 ・問題発生時には迅速に事実確認を行い、適切な対応を取る これらの取り組みにより、
  A社ではハラスメントとコンプライアンス違反の発生件数が大幅に減少し、従業員の満足度も向上しています。

6-2.失敗事例:B社の事例

B社では、ハラスメントとコンプライアンス違反への対応が不十分であったために、大きな問題に発展してしまいました。

 ・管理職によるパワーハラスメントが常態化していたが、対策が不十分だった
 ・コンプライアンス研修を実施していなかったため、従業員のコンプライアンス意識が低かった
 ・社内の相談窓口が形骸化しており、問題が表面化しにくい状況だった
 ・問題発生時の対応が遅く、被害が拡大してしまった その結果、B社では優秀な人材が流出し、
  企業イメージも大きく低下してしまいました。

以上の事例から、ハラスメントとコンプライアンス違反への対策の重要性と、具体的な取り組み方が分かります。自社の状況を見直し、適切な対策を講じることが求められます。

7.まとめ

ハラスメントとコンプライアンス違反は、企業にとって大きなリスクであり、その違いを理解した上で適切な防止策を講じる必要があります。社内体制の整備、効果的な研修の実施、発生時の迅速な対応、コンプライアンス意識の向上など、多角的なアプローチが求められます。本記事で紹介した事例を参考に、自社の状況に合わせた対策を検討し、実行に移すことが重要です。ハラスメントとコンプライアンス違反のない健全な職場環境の実現を目指しましょう。

その際は、「ホスピタリティ&グローイング・ジャパン」のハラスメント研修を利用するという方法がおすすめです。ホスピタリティ&グローイング・ジャパンのハラスメント研修はサービス業に特化していて、特に相談件数が多いパワハラとセクハラについて総合的に学ぶことができます。ハラスメントがこれからの社会で成長し続ける企業となるために、本格的な導入を考えてみてはどうでしょうか。

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投稿者プロフィール

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンにて、
各種サービスの企画担当を経て、現在はマーケティング部門にて編集を担当。
学生時代は居酒屋店員として4年間のアルバイトを経験し、飲食店の現場事情に精通。
今でもお店を訪れるとスタッフの動きが気になってしまう、自称『店舗事情ウォッチャー』。

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