介護離職とは?後悔しないために知るべき現実と対策|制度・理由・支援策を徹底解説

「もしかしたら、私も介護のために仕事を辞めることになるかもしれない…」 そんな不安を抱える人が、年々増え続けています。特に40代から50代の働き盛り世代を中心に、介護離職が深刻な問題となっています。家族の介護と仕事の両立に悩み、やむなく退職を選ぶケースが後を絶ちません。しかし、介護離職は将来の収入や生活、キャリアに大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、介護離職の定義から原因、制度、対策まで幅広く解説します。自分や家族、従業員を守るために、今知っておくべき知識を網羅的にお伝えします。

1.介護離職とは?|定義・背景・現状

1-1.介護離職の定義とは?

介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることを指します。 家族の急な介護が必要となったとき、勤務を継続するのが困難になり、離職を余儀なくされるケースが多くありますが、厚生労働省の定義では本人の意思による退職として明確に位置づけられています。英語では “Caregiver Quit” と表現されることもあり、国際的にも共通課題として注目されています。

1-2.背景にある社会構造の変化

日本社会では、少子高齢化と核家族化の進行により、家族による介護の負担が急激に増しています。かつては三世代同居が主流でしたが、現代では介護を担う人が限られるケースが増加中です。また、女性の社会進出や共働き世帯の増加により、仕事と介護の両立がより困難になっています。こうした社会構造の変化が、介護離職を後押しする背景となっています。

1-3.現状:誰もが直面するリスクに

介護離職は決して一部の人だけの問題ではなく、誰にでも起こりうる現実です。特に40代〜50代の働き盛り世代に多く、企業の中核を担う層に影響が及んでいます。介護離職者の増加は、企業にとっても人材損失や業務停滞という深刻な問題です。個人だけでなく、組織・社会全体で考えるべき重要な課題となっています。

2.介護離職の実態とデータ

総務省「就業構造基本調査(2022年)」によると、15歳以上で介護をしている人は629万人にのぼります。このうち就業者は365万人で、有業者の割合は全体の58.0%に上昇しています。前回調査(2017年)から比べると、介護をしている人の数はわずかに増加し、有業者の割合も2.8ポイント上昇しました。特に40代~50代では、男女ともに介護と仕事を両立している人の割合が高まっています。たとえば男性では「50~54歳」が88.5%、女性では同年齢層が71.8%と最も高くなっています。 介護と仕事の両立が増える一方、負担感やストレスの蓄積により、離職を選ぶケースも少なくありません。

総務省「就業構造基本調査(2022年)」の結果の図
参考:令和4年就業構造基本調査 (総務省)
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf

3.なぜ起こる?介護離職の主な理由と背景

3-1.両立困難と制度利用の壁

介護離職の大きな要因の一つは、仕事と介護の両立が物理的に難しくなることです。また、介護施設の空き不足やサービス利用までの手続きの煩雑さが課題となっています。一時的な対応では間に合わず、継続的な支援が得られないため、離職に至るケースも少なくありません。

3-2.介護者の心身負担の限界

介護は精神的・身体的に非常に負担が大きく、慢性的な疲労やストレスを抱える人が多くいます。「介護に疲れた」「もう限界」と感じた時に、仕事との両立を諦めざるを得ない状況もあります。自宅介護の孤立感や将来への不安が、離職という選択を後押ししているのです。

3-3.家族構成と職場環境の影響

核家族化や親族との距離がある場合、介護の負担が1人に集中しやすくなります。また、職場に理解や支援制度が整っていない場合、継続勤務が困難になります。相談相手がいない、情報が届かないという環境も、介護離職を招く要因となっています。

4.介護離職のメリット・デメリット

4-1.メリット:介護に集中できる環境

介護離職は決してネガティブな面ばかりではありません。介護に専念することで、家族との時間をしっかり確保でき、丁寧なケアが可能になることもあります。また、介護と仕事の板挟みから解放されることで、精神的な安定を得られる場合もあります。

4-2.デメリット:生活・キャリアへの影響

一方で、介護離職は長期的にみると経済的な打撃が大きくなります。収入の途絶により生活の見通しが不安定になり、年金や貯蓄への影響も避けられません。再就職の難しさやキャリア断絶、社会との接点喪失による孤独感も深刻な課題です。離職後の生活をどう設計するか、十分な検討が求められます。

5.仕事と介護の両立はできる?制度と企業の支援策

5-1.法制度の活用で両立を実現

介護休業制度や介護休暇制度は、介護と仕事を両立するうえで重要な支援策です。これらは育児・介護休業法に基づいており、要件を満たせば取得が可能です。また、介護休業給付金も制度の一環として支給されるため、経済的負担の軽減にもつながります。

介護休業給付とは?

介護休業給付は、家族の介護のために休業を取得した労働者に対し、一定の条件を満たす場合に支給される給付金です。休業中の賃金が、休業開始前の80%未満に下がった際、ハローワークに申請することで受け取ることができます。
平成29年1月の法改正により、介護休業は通算93日まで、最大3回に分けて取得できるようになりました。また、65歳以上の高年齢被保険者も対象となり、支給対象となる家族の範囲も拡大。これにより、同居していない祖父母、兄弟姉妹、孫も給付対象に含まれています。

参考:介護休業給付について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001280390.pdf

5-2.柔軟な働き方の導入がカギ

短時間勤務やフレックスタイム制度を導入している企業では、介護との両立がしやすくなっています。さらに、テレワークや在宅勤務の選択肢があることで、移動や拘束時間の負担も軽減されます。企業によっては、勤務形態の柔軟化や時間外労働の抑制にも取り組んでいます。

5-3.企業による支援と取り組み

一部の企業では、介護セミナーや専門相談窓口を設けて、社員の不安軽減に努めています。介護離職防止支援コースを活用し、社内制度の整備を進める企業も増加傾向にあります。職場全体で介護支援の体制が整えば、従業員の離職リスクも大幅に下げられます。

6.介護保険制度の基礎知識と活用法

6-1.介護保険とは何か?

介護保険制度は、高齢者やその家族を支援するための公的な社会保障制度です。要介護認定を受けると、必要に応じた介護サービスを一部自己負担で利用することができます。介護が必要となったときに頼れる基本の制度といえるでしょう。

参考:介護保険制度の概要(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf

6-2.利用できる主な介護サービス

訪問介護やデイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホームなど、さまざまな介護サービスがあります。これらは、要介護度に応じて柔軟に組み合わせることが可能です。自宅介護でもサービスを併用することで、介護者の負担を大きく軽減できます。

参考:公表されている介護サービスについて(厚生労働省)
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/

6-3.地域資源の有効活用

地域包括支援センターは、介護保険の申請やケアプランの作成支援を行う重要な拠点です。
ケアマネジャーと連携し、適切な介護計画を立てることで、離職せずに介護を続けられる可能性が高まります。制度の詳細は各自治体で異なるため、早めの相談と情報収集が欠かせません。

介護保険制度は、要介護者とその家族を支援するための公的制度です。要介護認定を受けることで、さまざまな介護サービスを利用できます。たとえば、訪問介護・デイサービス・ショートステイなどが該当します。費用の一部は介護保険から支給され、経済的負担を軽減する仕組みです。地域包括支援センターを活用すれば、制度の詳細や申請方法も相談可能です。ケアマネジャーと連携することで、適切なケアプランの作成ができます。介護保険の理解は、介護離職を防ぐ上で不可欠な知識といえるでしょう。

7.介護離職後のキャリア形成と再就職支援

7-1.離職後の不安と向き合うために

介護離職後の人生設計には、大きな不安がつきまといます。 収入の減少や社会との断絶を感じやすいため、将来を見据えた準備が重要です。 キャリアの見直しと再構築を図るタイミングとして前向きに捉えることも可能です。

7-2.公的支援制度の活用

ハローワークなどの公共機関では、職業訓練や就職相談、求人紹介など、多岐にわたるサポートが受けられます。 再就職支援給付金の利用も視野に入れておくとよいでしょう。

参考:求職者支援制度のご案内(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html

7-3.柔軟な働き方でキャリア再開

介護後の再就職では、パートタイム勤務や在宅ワークなど、柔軟な働き方を選ぶ人も増えています。また、介護経験を生かして介護職に転職するケースもあります。自分のスキルや希望に合わせて、無理のない形で社会復帰を目指すことが大切です。

8.まとめ

介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を離れることを意味します。その判断は、生活・収入・将来設計に多大な影響を与えかねません。介護保険制度や企業の支援制度を正しく活用することが重要です。
また、家族や職場と連携しながら、無理のない介護環境を整えることが大切です。一人で抱え込まず、早めに相談し、必要な支援を受けながら進めましょう。今できることから始めることで、介護離職を未然に防ぐ道が開けるはずです。

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投稿者プロフィール

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンにて、
各種サービスの企画担当を経て、現在はマーケティング部門にて編集を担当。
学生時代は居酒屋店員として4年間のアルバイトを経験し、飲食店の現場事情に精通。
今でもお店を訪れるとスタッフの動きが気になってしまう、自称『店舗事情ウォッチャー』。

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