【離職率低下】オンボーディングプログラム設計のポイントや具体例を紹介

企業にとって、採用活動は大きな投資です。しかし、せっかく採用した新入社員が早期に離職してしまうケースは後を絶ちません。

早期離職は、企業にとって採用コストの増大だけでなく、育成コストの損失、戦力化の遅れ、組織全体のモチベーション低下など、様々な負の影響をもたらします。また、新入社員にとっても、新たな環境への不適応やキャリアプランの頓挫など、大きな損失となります。

このような課題を解決するために注目されているのが、「オンボーディングプログラム」です。オンボーディングプログラムとは、単なる入社時研修にとどまらず、新入社員が組織にスムーズに適応し、早期に活躍できるよう、中長期的な視点で育成とサポートを行う包括的な取り組みです。

本記事では、オンボーディングプログラムの基本的な考え方から、プログラムの設計のポイントなどをご紹介します。採用コストの削減、人材の定着、組織力の強化を目指す企業様は是非お役立てください。

1.オンボーディングプログラムとは?

オンボーディングプログラムとは、新入社員が企業文化や業務内容を理解し、いち早く組織に溶け込み、活躍できるよう設計された一連のプログラムです。単なる入社時研修とは異なり、継続的な育成やサポートを通じて、新入社員の成長を促進し、定着率向上を目指します。

「on-board」は「乗り込む」という意味を持ち、新入社員を「組織という船に乗り込む新たな仲間」と捉え、スムーズな航海を支援するイメージです。対象者は新卒採用者だけでなく、中途採用者や幹部候補生など、組織に新しく加わるすべての人材に適用できます。

近年、オンボーディングプログラムが注目される背景には、採用競争の激化、リモートワークの普及、人材の流動化など、企業を取り巻く環境の変化があります。企業は、限られた経営資源の中で効率的に人材を育成し、競争優位性を確保していく必要に迫られているのです。

2.オンボーディングプログラムの目的

オンボーディングプログラムの目的は、大きく分けて

  • 新入社員の早期戦力化と成長スピード促進
  • 早期離職の防止
  • 社員のエンゲージメント向上と組織への定着
  • 部署間の教育格差是正

の4つに分類できます。

それぞれ詳しく説明します。

2-1.入社員の早期戦力化と成長スピード促進

企業は、新入社員が一日も早く戦力となり、会社に貢献してくれることを期待しています。そのためには、必要な知識やスキルを効率的に習得し、いち早く実務で成果を出せる状態へと導く必要があります。オンボーディングプログラムでは、企業理念やビジョン、事業内容、部署ごとの役割や業務内容などを体系的に学ぶ機会を提供します。また、OJTや研修を通じて、実践的なスキルを身につけるサポートを行います。

新入社員の個性や強みを把握し、育成計画に反映させることで、個々の成長スピードを高めることができます。

2-2.早期離職の防止

早期離職は、企業にとって採用コストや育成コストの損失、人材不足、組織全体のモチベーション低下など、様々な負の影響をもたらします。オンボーディングプログラムを通じて、入社前後のギャップを最小限に抑え、安心して業務に取り組める環境を提供することで、早期離職を効果的に防止できます。

具体的には、入社前に職場環境や仕事内容について十分に理解する機会を設けたり、入社後も定期的な面談や相談しやすい体制を整えたりすることで、新入社員の不安や疑問を解消します。

2-3.社員のエンゲージメント向上と組織への定着

企業は、従業員一人ひとりが高いエンゲージメントを持ち、組織への愛着や帰属意識を持って長く活躍してくれることを望んでいます。オンボーディングプログラムを通じて、企業文化や価値観への共感を深め、組織の一員としての自覚を育むことで、従業員のエンゲージメント向上と組織への定着を促進できます。

具体的には、企業理念やビジョンを共有する研修、先輩社員との交流会、社内イベントへの参加などを通じて、企業への理解と愛着を深める機会を提供します。

2-4.部署間の教育格差是正

従来のOJT中心の教育体制では、配属された部署や上司によって、新入社員の教育レベルにバラつきが生じやすいという課題がありました。オンボーディングプログラムを通じて、すべての新入社員に対して、一定水準以上の教育を均等に提供することで、部署間の教育格差を是正し、人材育成の質向上を図ります。

具体的には、共通の研修プログラムを実施したり、標準化された教育マニュアルを作成・共有したりすることで、教育内容の統一性を確保します。

3.オンボーディングプログラムを実施するメリット

オンボーディングプログラムを実施することで、企業と従業員双方に様々なメリットが生まれます。

企業側のメリットとしては、

  • ・採用コストと人材育成コストの削減
  • ・チームの生産性向上
  • ・優秀な人材の定着

などが挙げられます。

早期離職を抑制することで、採用活動や育成にかかるコストを大幅に削減できます。また、新入社員がスムーズに業務を習得することで、チーム全体の生産性向上にも繋がります。さらに、働きやすい環境を提供することで、優秀な人材の定着率向上も期待できます。

一方、従業員側のメリットとしては、

  • ・社員同士の交流促進と助け合い
  • ・モチベーション向上
  • ・エンゲージメント向上

などが挙げられます。

オンボーディングプログラムを通じて、同期や先輩社員との関係性を築きやすくなることで、孤立を防ぎ、スムーズな職場環境に繋がります。また、自身の成長を実感できる機会が増えることで、モチベーション向上や仕事へのエンゲージメント向上にも繋がります。

4.オンボーディングプログラムを設計する際のポイント

効果的なオンボーディングプログラムを設計するには、新入社員が抱える不安や課題を理解し、それらを解消するための工夫を凝らすことが重要です。

新入社員が直面する代表的な5つの壁があります。

  • ・「準備」の壁
  • ・「人間関係」の壁
  • ・「期待値」の壁
  • ・「学び」の壁
  • ・「成果」の壁

それぞれ対策を紹介します。

4-1.「準備」の壁

入社前に必要な情報を提供し、スムーズな受け入れ体制を整えましょう。オフィス環境の紹介動画や、必要な持ち物リストなどを事前に共有することで、新入社員の不安を軽減できます。

4-2.「人間関係」の壁

歓迎会やチームランチなど、交流を促進する機会を設け、早期に職場に馴染めるようサポートしましょう。メンター制度を導入し、相談しやすい環境を作ることも有効です。

4-3.「期待値」の壁

部署の役割やミッション、具体的な業務内容、期待される成果などを明確に伝え、入社前後のギャップを最小限に抑えましょう。定期的な面談を通じて、認識のズレを修正していくことが重要です。

4-4.「学び」の壁

業務に必要な知識やスキルを効率的に習得できるよう、分かりやすいマニュアルを整備したり、オンライン研修システムを導入したりするなど、効果的な学習体制を構築しましょう。

4-5.「成果」の壁

大きな目標を細分化し、達成しやすいスモールステップで提示することで、早期に自信とモチベーションを高められるよう促しましょう。こまめなフィードバックを通じて、成長を支援することも大切です。

特に、入社後の3ヶ月間は、新入社員のモチベーションを維持し、早期戦力化を図る上で非常に重要な期間です。この時期に集中的なサポートを行うことで、その後の活躍に大きく影響を与えることができます。

5.段階的なプログラムで成長を後押しするオンボーディングプログラムの具体例

ここでは、具体的なオンボーディングプログラムの例を、入社前、入社直後、入社数ヶ月後の3つの段階に分けてご紹介します。

5-1.入社前のプログラム例

  • ・内定者研修:ビジネスマナーや社内システムの使い方などを学ぶ
  • ・インターンシップ:実際の業務を体験し、仕事のイメージを掴む
  • ・交流会:同期や先輩社員と交流し、親睦を深める
  • ・会社見学:オフィス環境や雰囲気を体感する
  • ・懇親会:フランクな雰囲気の中で、社員と交流する
  • ・定期面談:キャリアビジョンや不安な点をヒアリングする
  • ・社内広報資料の送付:企業文化や最新情報を理解する

5-2.入社直後のプログラム例

  • ・企業理念、ビジョン研修:企業の価値観や目指す方向性を理解する
  • ・社内ルール、文化研修:コンプライアンスや社内ルールを遵守する
  • ・業界知識、自社特徴研修:市場動向や競合、自社の強みを理解する
  • ・部署見学、歓迎会、ランチ会:部署のメンバーや雰囲気を知る
  • ・OJT:先輩社員の指導のもと、実践的なスキルを身につける
  • ・個別面談:目標設定やキャリアプランについて相談する
  • ・新人発表会:研修の成果や今後の抱負を発表する

5-3.入社数ヶ月後のプログラム例

  • ・業務振り返り、評価:上司との定期的な面談で、業務の進捗や課題を共有する
  • ・スキルアップ研修、交流会:専門スキル向上や他部署との交流を図る
  • ・社内プロジェクトへの参加:実践的な経験を通じて、スキルを磨く
  • ・キャリア面談、人事面談:将来のキャリアプランや異動希望などを相談する
  • ・メンター制度の継続:継続的な相談相手として、メンターによるサポートを受ける

これらのプログラムはあくまでも一例であり、自社の課題や規模、業界、新入社員の属性に合わせて、柔軟に設計していくことが重要です。

6.オンボーディングプログラムをDXする理由

近年、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX) が推進されていますが、人事領域、特にオンボーディングプログラムにおいても、デジタル化の波が押し寄せています。従来の対面研修や紙媒体中心のプログラムから、デジタルツールを活用したプログラムへと移行することで、より効率的かつ効果的な人材育成が可能になります。

6-1.デジタル化で克服する!人間の記憶の限界

「エビングハウスの忘却曲線」という言葉をご存知でしょうか。これは、人間の記憶は時間とともに減衰していくというもので、一度学習した内容も、復習しなければ忘れられてしまうという人間の記憶の特性を表しています。

デジタルツールを活用したオンボーディングプログラムでは、学習コンテンツをオンライン化し、いつでもどこでもアクセスできるようにすることで、繰り返し学習を促進できます。モバイルアプリなどを活用すれば、スキマ時間を使って効率的に学習を進めることも可能です。さらに、学習管理システム(LMS)などを導入すれば、個々の習熟度に合わせて学習内容を調整したり、復習問題を自動配信したりすることも可能になるため、より効果的な学習を促すことができます。

6-2.時間と場所の制約が無い柔軟性

従来の紙媒体での情報共有や対面での研修は、時間や場所の制約が大きく、非効率になりがちでした。参加者は決められた時間、場所に拘束され、移動時間や会場準備などのコストも発生します。

オンボーディングプログラムをDXすることで、これらの制約から解放され、時間や場所を選ばずに学習できる柔軟な環境を提供できます。オンライン研修システムや動画学習プラットフォームなどを活用することで、遠隔地にいる新入社員や、忙しい合間を縫って学習したい社員も、自分のペースで効率的に学習を進めることが可能になります。

6-3.時間と場所の制約が無い柔軟性

デジタル化の大きなメリットの一つに、データに基づいた進捗管理や効果測定が容易になるという点があります。従来のプログラムでは、進捗状況や効果を把握することが難しく、属人的な評価になりがちでした。

DXすることで、学習時間、テスト結果、アンケート回答などのデータを収集・分析し、個々の進捗状況やプログラムの効果を客観的に把握することが可能になります。これらのデータは、プログラム内容の改善や個別指導に活かすことができ、より効果的なオンボーディングプログラムの構築に繋がるでしょう。

デジタル技術の進化は、オンボーディングプログラムの可能性を大きく広げます。企業は、自社の課題やニーズに合わせて最適なデジタルツールを活用することで、新入社員の早期戦力化、エンゲージメント向上、定着率向上といった目標の達成を促進できるはずです。

7.まとめ:オンボーディングプログラムで、新入社員の定着と成長を実現

オンボーディングプログラムは、新入社員の早期戦力化、早期離職の防止、社員のエンゲージメント向上、組織力強化などに大きく貢献します。

自社の課題やニーズを分析し、効果的なオンボーディングプログラムを設計、実行することで、企業は採用活動の投資対効果を高め、人材の定着率向上を実現できます。また、新入社員は安心して成長できる環境を手に入れ、自身のキャリアを力強く歩み出すことができるでしょう。

本記事が、オンボーディングプログラム導入のきっかけとなり、企業と従業員双方にとってより良い未来を創造する一助となれば幸いです。

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グローイング・アカデミー 担当者グローイング・アカデミー担当者

投稿者プロフィール

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンにて、
各種サービスの企画担当を経て、現在はマーケティング部門にて編集を担当。
学生時代は居酒屋店員として4年間のアルバイトを経験し、飲食店の現場事情に精通。
今でもお店を訪れるとスタッフの動きが気になってしまう、自称『店舗事情ウォッチャー』。

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