企業運営において人材マネジメントが注目されるようになりましたが、実際に正しく理解している企業担当者は少ないかもしれません。人材マネジメントは企業にとって必要性が高く、他社との差別化を図り業界で存在感を出すために欠かせない取り組みです。この記事では、人材マネジメントの概要や必要性、人材マネジメントを行う際のポイントについて紹介します。
1.人材マネジメントとは?
企業にとって「人材は宝」といわれるように、優秀な人材を採用して育てていくのは大変重要な業務です。そのなかで、重要な役割を担うのが人材マネジメント。そもそも人材マネジメントとは、他社と差別化して自社の優位性を維持、強化することを目的として、人材を適切に管理することです。具体的には、従業員が成長できる環境の整備や研修の実施、評価や昇進制度の仕組みを整えるなどの施策が人材マネジメントにおける適切な人材管理と言えます。適切な人材マネジメントができれば、従業員満足度と業務意欲の向上によって企業価値が高まり、他社に負けない競争力のある企業として業界で存在感を発揮できるでしょう。
ちなみに、人材マネジメントと似ている言葉に人事管理や労務管理がありますが、人事管理は従業員の報酬や異動、労務管理は労使関係の管理や労働時間の管理が主な業務です。マネジメントには「管理」という意味もあるので「人材マネジメント=人材管理」とも言えますが、人材マネジメントでは「経営」の視点も欠かせません。人事の管理に経営面での視点を加え、企業を発展させるための要素として人材をとらえていることが人材マネジメントの特徴です。
2.人材マネジメントの必要性
従来、国内企業の多くが採用していた人事制度は年功序列の終身雇用制でした。加えて、採用選考に時間がかかり、昇進するまでに長い年月を要するなども特徴です。企業文化を醸成していくうえで、従来の仕組みがすべて間違いとは言えないものの、少子高齢化や趣味趣向の変化などから国内市場が変化・縮小するなかで、企業も社会情勢に合わせて変化をしなければなりません。そこで必要なのが人材マネジメントです。
生き残り競争の色合いが濃くなってきた国内市場において、企業がライバル他社に負けないためには、他社との明確な差別化、他社と比較した際の優位性が条件になります。その実現には経営戦略や事業戦略が鍵を握りますが、戦略を実行するのは従業員です。だからこそ、自社だけのオリジナリティにあふれた人材マネジメントが必要になるのです。
3.人材マネジメントの内容
人材マネジメントを適切に行うには、必要な要素を細分化して考える必要があります。それぞれの内容を確認しておきましょう。
人材採用に臨む前に自社の経営戦略を振り返り、自社に必要な人材を明確にする。
既存社員の能力を高め、適材適所の配置にするための育成計画を作成して推進する。社員がスキルアップできる育成計画になっているかがポイント。
従業員の正しい評価を行う。客観的な評価ができること、従業員のモチベーションアップになる評価ができる制度の構築が重要。
業務内容や能力に応じて適切な報酬が支払われる仕組みを構築する。能力面においては評価との整合性の整備が重要。
人材を適切な部署に配置する。スキルとモチベーションを向上させるために、配置の定期的な見直しを行い、個人の能力が発揮できる配属先を見つける。
福利厚生の充実度合いは従業員満足度に与える影響が大きい。他社との比較、従業員からの要望の吸い上げなども必要。
ここで紹介した6つのポイントは、人材マネジメントの施策を進めるうえで欠かせない内容です。どれかひとつが抜けても効果の高い人材マネジメントを行うのは難しくなるので、すべての要素を盛り込みましょう。
4.人材マネジメントを行う際のポイント
人材マネジメントを構成する要素を踏まえたうえで、適切にマネジメントを行う際のポイントを紹介します。
企業のビジョンと一貫性を持たせる
紹介したように、人材マネジメントの目的は経営戦略や事業戦略の達成です。そのために、人材マネジメントを活用しながら従業員の業務パフォーマンスの最大化を図る必要があります。ところが、人事部やマネジメント担当者が策定した人材マネジメント計画の方向性が企業の経営戦略とずれていると、従業員は会社に対して疑問を抱いてしまうでしょう。たとえば、短期的な経営戦略として売り上げを120%増としているのに、経費削減に特化した人材教育を進めるようなケースでは、経営戦略と人材マネジメントが反対の方向を向いている状態です。
本来なら戦略に合わせて売り上げアップにつながる人材教育をしなければならないのに反対の施策に取り組んでしまうと、従業員は混乱してしまい、会社側も思うような効果を得られないでしょう。そのため、従業員が迷わないように企業のビジョンと一貫性を持たせなければなりません。企業の成長は、経営トップから末端の従業員までのすべてが同じ方向性を向いてこそ成し遂げられるものですので、人材マネジメント計画は企業のビジョンに沿って考えるようにしましょう。
従業員自身に目標を設定させる
会社と従業員のあいだで、会社が進むべき方向性や目標を共有できたら、次は企業目標を達成するために従業員自身ができることを考えさせるフェーズに入ります。会社側で従業員に与えた課題を目標にする方法もありますが、第三者が立てて与えた目標よりは、自分自身で立てた目標のほうが達成するためのモチベーションが上がりやすいでしょう。企業側としても、従業員自身が立てた目標と結果にどれくらいのズレがあるのか、客観的に評価しやすくなります。
また、従業員自身が立てた目標を達成した場合、従業員が得られるインセンティブ制度を設けるのも有効です。この場合のインセンティブは必ずしも金銭ではなく、業務で必要な物品を報酬としたり、表彰制度を設けたりするなどの方法もあります。ただし、インセンティブ制度の導入によって、報酬を得ることを目的に自身の目標レベルを引き下げる従業員も存在するので、ケースバイケースの施策であり、企業によって賛否が分かれるところでしょう。とはいえ、従業員のモチベーションを高めるには有効な施策のひとつであることは間違いないので、導入を検討する価値はあります。
状況に合わせて変化させていく
人材マネジメントを適切に進めるのであれば、時代背景や社内リソース、人材マネジメント計画に沿って人事制度を変化させていく必要があります。企業にとって解決しなければならない問題や重要な課題は常に一定ではありません。人事制度の作成とスタートで終わりとは考えず、制度内容の確認と変更もセットで見直しをしていく必要があるのです。もちろん、企業の戦略も短期的には変化するものですから、人材マネジメントの施策も適宜見直し、それに合う人事制度へと変更が必要になるでしょう。
ただし、制度を企業側で一方的に変更して従業員にアナウンスするという手法は、従業員の反発を招くおそれがあるのでおすすめできません。場合によっては離職につながるおそれもあるので、会社側の考えだけでなく従業員を巻き込んで幅広く意見を出してもらうなどの工夫も必要です。とくに、世代間ギャップのある企業では、従業員の年代によって考え方が異なるので、各年代の従業員から意見を集めたほうが人材マネジメントを効率よく進められるでしょう。
5.これからは人材マネジメントが重要
企業ごとの戦略で差別化を図るのは難しい時代になっているなかで、他社に負けない存在感を出すには人材マネジメントが鍵を握ります。今現在の人材マネジメント手法を見直したい方、今後実践を検討している方は専門家に依頼するのも一つの手です。H&Gではマネジメント層向けの人事評価制度をオーダーメイドで構築できるサービス「H&G PERFOMANCE REVIEW(人事評価制度構築)」や、マネジメント層向け含め、企業の課題に合わせたオーダーメイドの研修を実施できる「H&G IN-HOUSE TRAINING(出張研修)」を提供しています。この機会に検討してみてはいかがでしょうか。