お客様からのクレームは、商品やサービスを提供する以上、避けては通れません。その場ですぐに対処できるクレームもあれば、お客様が商品を家に持ち帰った場合など、後になってからクレームが発生することもあります。このようなケースでは、クレームをメールで受け取ることもあるのではないでしょうか。この記事では、クレーム対応におけるメールの基本的な書き方やコツの解説と、例文を紹介します。
1.クレーム対応メールの基本的な書き方
メールでクレーム対応を行う場合、冒頭から謝罪の言葉を述べるのは望ましくありません。まずは挨拶文とお礼、その後に謝罪文や解決策の提案を入れるのが基本です。ここでは、それぞれの内容について解説します。
1-1.挨拶文とお礼
文章の始まりは「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」などの丁寧な挨拶文を入れます。しかし、これだけではフォーマットをそのままコピーしたような印象を受けるお客様もいるかもしれません。そのため、次の文章として「この度は当社の〇〇〇をご購入いただき、ありがとうございます」など、商品やサービスの名称を記載して、購入に対する感謝を伝えましょう。
1-2.謝罪文
次に、発生したクレームを的確に記載し、それに対する謝罪文を入れます。謝罪文のポイントは、お客様は商品やサービスに対して「おいしさ」や「楽しさ」などの期待を持っていたことを理解することです。たとえば、大切な人にあげるために購入した食べ物に異物が入っていた場合、相手にあげた後に「いただいたものに異物が入っていた」と指摘されたのであれば、相手に対して申し訳ない気持ちになっているでしょう。謝罪文は、そのようなお客様の心情を理解する姿勢を見せることが大切です。
1-3.クレームの原因や理由
次に、クレームとなった事象に対する原因や理由を説明します。先に挙げた食べ物の異物混入であれば「この度の問題は、製造過程でのチェックが不十分であったことが原因です」といった、客観的かつ具体的な文章が望ましいでしょう。ここで重要なのは、事実のみを明確に提示することです。どうしても原因の究明が困難なケースでも嘘を伝えることは好ましくありません。「原因究明のために最善を尽くしましたが、特定には至りませんでした」としたうえで「これは、原因が特定できない当社のシステムに問題があります」など、あくまでも問題は当方にあるという姿勢を見せましょう。
1-4.具体的な対応と今後の改善策
具体的な対応はお客様がもっとも明確にしてほしいポイントです。商品の返金や交換など、今後の対応について具体的な案を提示しましょう。お客様からのメールに「返金してほしい」など、すでに希望が記載されている場合は、できるだけそれに沿う対応を行います。希望どおりの対応が難しい場合は「お客様がご希望される代金の返金は致しかねますが、今一度商品をお送りいたします」など、代替となる案を提示しましょう。
今後の改善策は、そのお客様にとってはそれほど重要ではありません。しかし「お客様からのクレームによって今後起こり得る同様のクレームを防げる」ことも事実です。そのため「今後は製造工程におけるチェック体制を見直し、同様の問題が発生しないよう努めてまいります」などの改善策を明記します。「お客様は改善を促す貴重な存在である」という企業の姿勢を感じ取ってもらえるでしょう。
1-5.締め・結びの言葉
メールの締めには、改めて謝罪の言葉を入れます。あわせて、一連のやり取りに時間を割いてくれたことへの感謝の気持ちを伝えましょう。「貴重な時間を使って教えてくださったことに感謝申し上げます」といったポジティブな結びの言葉が理想的です。クレームのメールを送る多くのお客様は、怒りだけではなく不安も抱いています。「クレーマー扱いされるのではないか」「もし、原因が企業側になかったらどうしよう」など、複雑な心情を持っていることがほとんどです。企業がその不安を理解し、感謝の気持ちを示すことでお客様もポジティブな気持ちを取り戻せます。
2.【状況別】クレーム対応メールの例文を紹介
ここからは、サービス業においてよく見受けられるクレームを例に、クレーム対応メールの例文を紹介します。業種や状況によって使い分け、適切な文章を送りましょう。
2-1.商品やサービスに関するクレーム
商品やサービスに関するクレームは、異物混入や期限切れなど商品そのものの不備と「写真と実物に大きな違いがある」「期待していたほどのものではなかった」など、誇大広告とお客様が捉えているケースの大きく2つに分けられます。また、通信販売などでは「指定の日時に届かなかった」というクレームも少なくありません。これらのクレームには、以下の例文を参考に文章を構成しましょう。
クレーム対応メールの例文
この度は、弊社の商品をご購入いただき、ありがとうございます。
数ある商品の中から弊社の商品を選んでいただいたにもかかわらず、ご期待に沿えなかったことに心よりお詫び申し上げます。
お客様からご指摘がございました点につきまして確認したところ、確かにご購入いただいた商品と見本には大きな違いがございました。
弊社といたしましては、改めて商品をお届けに伺いたいと存じます。
つきましては、ご希望の日時をご返信いただけると幸いです。
今後は、製造工程および出荷時の確認基準を見直し、再発防止に努めてまいります。
改めてお詫びを申し上げるとともに、貴重なご意見に感謝いたします。
ご連絡をいただき、ありがとうございました。
2-2.飲食・接客など現場へのクレーム
飲食や接客などの現場では、さまざまなタイプのクレームが発生します。もっとも多く見受けられるのは、料理や飲み物を落としたりこぼしたりして、お客様の衣類を汚した、あるいは怪我を負わせたというものです。そのほかにも「オーダーしたものと違う料理を出された」などといった従業員のミスによるものも少なくありません。現場へのクレームに対しては、以下の文章を参考にしましょう。
クレーム対応メールの例文
この度は、当店をご利用いただき、ありがとうございました。
ご家族さまの誕生日という特別な日に当店をお選びいただいたにもかかわらず、心の通った対応ができなかったことに心よりお詫び申し上げます。
すでにお電話でオーダーをいただいていた料理の提供に30分もの時間がかかってしまったこと、その後のスタッフの対応が適切でなかったことは、私どもの社員教育が不十分であったことに原因があります。
今後は、お客様の期待に沿えるよう、社員教育の見直しを図る次第です。
私どもといたしましては、今一度当店で楽しい時間を過ごしていただきたいと存じます。
特別な時間が戻ってこないことは承知のうえでのご提案にはなりますが、食事券を同封いたしますのでご検討いだければ幸いです。
改めてお詫びを申し上げるとともに、貴重なご意見をいただきましたことに感謝いたします。
ありがとうございました。
2-3.企業側に非がない・落ち度がない場合のクレーム
クレームの中には、企業側に非や落ち度がないものもあります。たとえば、冠婚葬祭などでは「司会者の声が不快だった(自分の嫌いなタイプの声だった)」「結婚式や葬儀が長すぎて手配していた交通機関を利用できなかった」といった、お客様の趣味や嗜好、思い違いがクレームの原因になるケースも少なくありません。これらの場合は、以下の例文を参考にしましょう。
クレーム対応メールの例文
この度は、当館をご利用いただき、ありがとうございます。
ご親族さまの結婚式という特別な時間を、締めくくりまで見届けられなかった心痛はいかばかりかと拝察いたします。
確かにこの度の結婚式は締めくくりまでの時間が比較的長く、ゲストの皆さまがご負担を感じることも事前に推測できました。
それにもかかわらず、お帰りの時間には余裕を持って交通機関などを手配するよう、ゲストの皆さまにお伝えすることを、ご新郎さまおよびご新婦さまにアドバイスを十分にしていなかったことが問題につながったと認識しております。
今後は、ご新郎さまご新婦さまのみならず、ゲストの皆さまの状況も十分に考慮したうえで準備を進めるよう努めてまいります。
この度は、お詫びの気持ちとしてグループ各社で使用できるクーポン券を同封いたします。
ぜひ最寄りの店舗でご利用くださいませ。
貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
3.クレーム対応メールで気を付けるべきポイント
メールでのクレーム対応は表情や声色が感じ取れないため、十分な注意を払わないと二次クレームに発展する可能性も少なくありません。ここでは、クレーム対応のメールを送る際に気を付けるべきポイントを解説します。
3-1.言葉選びに注意する
文字のみのやり取りは、時として相手に冷たい印象を与えることがあります。あまりにもそつのない文章では「定型文をコピーしただけではないか」と捉えられることもありますし、言葉遣いに誤りがあれば「正しい日本語や敬語を使っていない」と評価されます。メールを送る前には、誤字脱字のチェックはもちろんのこと、言葉選びに問題がないか確認することが大切です。
3-2.返信は24時間以内にする
クレームのメールに対する返信は24時間以内に行いましょう。24時間を超えてしまうとお客様の怒りが高まりやすくなります。中には、原因の究明に時間を要するなど、早急に返信できないこともあります。その場合は、端的な返信をして「改めて〇日(〇時)までにメールをお送りいたします」と約束することも有効です。
4. H&Gの研修サービスを利用してクレーム対応力を高めよう
メールでのクレーム対応には文章力が必要ですが、文章を書くことが得意な従業員にばかりその仕事を担ってもらうことは無理があります。なぜなら、クレームは一件ごとに内容が異なり、担当した従業員やその場にいた従業員でなければ状況を把握できないことも多いからです。一方、クレーム対応は失敗が許されないため、日常業務の中でクレーム対応力を上げることは困難です。研修サービスを受講するなどの従業員教育を実施し、多くの従業員がクレーム対応力を身に付けることが大切です。
H&Gでは「GA LIVE+」、「GA Premium」などの研修サービスおよび学習サービスを提供しています。オンライン研修サービスの「GA LIVE+」は、ライブ研修もしくは録画型授業で、サービス業での現場経験のある講師による良質な研修の受講が可能です。対面や電話対応など、クレーム対応全般に関する講座を受けられます。「GA Premium」は、現場での課題解決能力が身につく体感型研修サービスです。こちらは対面型でロールプレイングやディスカッションを重視した研修サービスのため、より現場での実践に活用しやすい内容となっています。豊富な実績を持つH&Gの研修サービスを利用して、クレーム対応力の向上を目指しましょう。
まとめ:注意点を踏まえてメールでのクレーム対応を円滑に行おう
メールでのクレーム対応は、速さと丁寧な言葉選びが重要です。だからといって、ただ速く返信すればよい、丁寧な言葉遣いをマニュアル化すればよいというわけではありません。従業員のクレーム対応力を上げ、一件ごとに異なるクレームに的確な対応をするためにも「GA LIVE+」などの研修サービスや「GA Premium」などの学習サービスの利用を検討しましょう。
クレーム対応については以下記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
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