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- 【第2弾】企業が取り組むべきカスハラ対策
– 従業員の心身の健康を守るために
企業において、従業員が心身の健康を維持するためには、顧客からのハラスメント、いわゆる「カスハラ」への対策が欠かせません。近年、サービス業や飲食業をはじめとする多くの業種でカスハラ事例が増加しており、従業員のメンタルヘルスに深刻な影響を与えるケースも見られます。本コラムでは、企業が実施すべきカスハラ防止対策や、具体的な対応方法について解説します。顧客対応の基礎を見直し、従業員と顧客の双方にとってwin-winの関係の構築を目指しましょう。
【第1弾】の記事でもカスタマーハラスメントについて詳しく紹介しています。
目次 クリックすると詳細を表示・非表示できます
- 1.カスハラ発生のメカニズムと要因
- 2.よくある5つのカスハラ事例とタイプ別の特徴
- 3.企業が抱える課題
- 3-1.カスハラに対する認識不足
- 3-2.対応の難しさ
- 3-3.証拠の確保
- 4.企業が取るべき基本的なカスハラ対策
- 4-1.明確なポリシーの策定と通知
- 4-2.カスハラ事例の収集と分析
- 4-3.カスハラ対応マニュアルの作成
- 5.カスハラから従業員を守るための具体的な対策
- 6.カスハラ対策の実施における注意点
- 6-1.トップのリーダーシップと組織文化の醸成
- 6-2.早期発見と迅速な対応の重要性
- 6-3.プライバシーへの配慮と信頼関係の構築
- 6-3.継続的な取り組みとPDCAサイクルの実践
- 7.カスハラ問題発生時の対応策
- 8.まとめ
- カスハラにお悩みならH&Gのハラスメント研修
1.カスハラ発生のメカニズムと要因
カスハラ発生の背景
カスハラの発生には、顧客の過度な要求や、業界特有の接客マナーが関わっています。特に、小売業や飲食業の現場では、顧客が従業員に対して無理な要求を押し付けることが多く、これがカスハラの引き金となることがよくあります。近年の「お客様は神様」という理念が一部で誤って拡大解釈され、従業員が過剰なストレスを抱える状況を招いています。
カスハラ発生の背景は、主に以下の3つが考えられます。
①顧客の権利意識の高まり
インターネットやSNSの普及により、消費者は容易に情報を得たり、発信したりできるようになりました。それに伴い、自身の権利を主張する傾向が強まっている一方、企業側の対応に不満を抱くケースも増加しています。
②ストレス社会
現代社会は、経済状況の不安定さや競争の激化など、ストレスの多い環境です。顧客の中には、そうしたストレスをサービス業などの従業員にぶつけてしまう人もいます。
③匿名性の高さ
インターネットや電話を利用したカスハラは、匿名性が高いため、加害者側の罪悪感が薄れ、エスカレートしやすいという特徴があります。
2.よくある5つのカスハラ事例とタイプ別の特徴
特徴
カスハラは、大きく5つのタイプに分けられます。企業はそれぞれの特徴を理解し、状況に応じた対応策を講じる必要があります。ここでは、5つのタイプの特徴と具体例を説明します。
①暴言・脅迫型
大声で罵倒したり、暴力を振るったりする、または危害を加えることを示唆する。
【具体例】
最近、ある小売店で顧客の一人が購入した商品の返品を求めてくる場面がありました。その顧客は、本来返品の対象外であることを説明されると、激昂して店員に対し大声で「このアホ定員!」などと罵倒を始め、商品を投げつけるなどして、店舗内に居合わせた他の顧客にも迷惑をかけました。さらに、今後も店舗に来て問題を起こすと脅迫し、店員や他の客に対して不安と恐怖を与えました。こうした行為は、従業員の心身に大きなダメージを与え、業務に支障をきたす恐れがあります。
②執拗なクレーム型
要求が通るまでしつこく電話やメールでクレームを繰り返す。
【具体例】
サービス業を営む企業で、ある顧客が契約内容に異議を唱え、何度も電話やメールでクレームを入れてくるケースがありました。最初は丁寧に対応していましたが、次第に要求がエスカレートし、業務に支障を来すようになりました。日夜を問わず連絡が来ることから、従業員のメンタルヘルスも悪化していきました。
③誹謗中傷型
インターネット上の口コミサイトやSNSで、企業や従業員に関する事実無根の悪口を書き込む。
【具体例】
ある飲食店がインターネット上の口コミサイトで事実無根の悪評を書かれる事件が起こりました。書き込みには、「食事に異物が混入していた」「従業員は全員態度が悪い」などの根拠のない悪評が含まれており、店の評判を著しく傷つけてしまいます。
④業務妨害型
店舗内で大声で騒いだり、長時間にわたって居座ったりするなど、業務を妨害する。
【具体例】
ある小売店では、顧客がレジでの対応に不満を抱き、「ここで寝泊まりしてやる!」と言って店内に座り込んだり、他の顧客に絡んだりすることがありました。こうした行為は、店舗運営に支障をきたし、他の顧客の迷惑になります。
⑤不当要求型
返金や謝罪など、常識的に考えて不当な要求を突き付ける。
【具体例】
ある企業では、顧客が過去に購入した商品に問題があると主張し、不当な返金を求めてきました。商品は通常の使用で故障したもので、保証期間も過ぎていたため対応は難しいものでした。しかし、顧客は返金を繰り返し要求し、企業は対応に苦慮しました。こうした行為は、企業側が歩み寄ったとしても、さらなる要求を招く恐れがあります。
これらの事例は、業種や状況によって異なる特徴を持ちます。飲食業では、料理の品質に対するクレームが多く、小売業では返品や交換に関する無理な要求が頻発する傾向があります。企業がカスハラ事例をしっかりと収集・分析することが重要です。
参照:カスタマーハラスメント事例集(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001266535.pdf
3.カスハラ対応マニュアルの作成方法
ここでは、企業がカスハラに対して抱える課題を3つ説明します。
3-1.カスハラに対する認識不足
多くの企業では、「お客様は神様」という考えが浸透しており、顧客からのクレームは常に正当なものと捉えられがちです。そのため、カスハラと通常のクレームの区別がつかず、従業員に我慢を強いるケースが見受けられます。カスハラに対する正しい理解と認識を持つことが、適切な対応の第一歩となります。企業は、カスハラの定義や具体例を示し、従業員教育を徹底することが求められます。
3-2.対応の難しさ
顧客対応は従業員にとって大きな負担であり、適切な対応を取ることが難しいと感じるケースも多いです。カスハラ対応は、従業員にとって大きな負担となります。相手の感情に流されず、冷静かつ適切に対応することは容易ではありません。特に、経験の浅い従業員にとっては、カスハラ対応が大きなプレッシャーとなり、メンタルヘルスに影響を及ぼす恐れがあります。企業は、従業員のスキルアップを図るとともに、上司やチームメンバーのサポート体制を整備することが重要です。
3-3.証拠の確保
カスハラは、口頭で行われることが多く、証拠を残しにくいという特徴があります。特に、電話でのクレームや、店舗での face to face の対応では、事実関係を証明するのが難しいケースもあります。こうした場合、企業側が不利な立場に立たされる可能性があります。証拠の確保については、通話録音や、複数人での対応、報告書の作成など、できる限りの手段を講じることが求められます。また、カスハラが悪質な場合は、法的措置を視野に入れ、弁護士に相談することも重要です。
カスハラに適切に対応しない場合、従業員の離職率が高まるだけでなく、CS(顧客満足度)の低下にもつながります。従業員がカスハラに対して無力感を感じると、ES(従業員満足度)も著しく低下し、企業全体の生産性に悪影響を及ぼします。企業は、従業員のメンタルヘルスやリスク管理の観点から、適切なカスハラ対策を講じる必要があります。
CS(顧客満足度)について、以下の記事で詳しく紹介しています。
4.企業が取るべき基本的なカスハラ対策
4-1.明確なポリシーの策定と通知
企業はまず、カスハラ防止に関する明確なポリシーを策定し、全従業員に通知する必要があります。ポリシーには、カスハラに対する具体的な対応方針や、従業員を守るためのガイドラインを含めるべきです。さらに、顧客に対しても、このポリシーを適切に伝えることで、問題の予防に努めます。
4-2.カスハラ事例の収集と分析
カスハラ事例の収集と分析は、企業が抱える問題を可視化する重要なステップです。これにより、どのような状況でカスハラが発生しやすいかを把握し、予防策を強化できます。カスハラ事例をデータとして蓄積し、パターンを分析することで、従業員教育やカスハラ対応マニュアルに役立てましょう。
4-3.カスハラ対応マニュアルの作成
カスハラ対応マニュアルは、企業が従業員を守りながら適切に顧客対応を行うための重要なツールです。マニュアル作成には具体的な手順とフローチャートが欠かせません。
さらに詳しく知りたい方は、「カスハラ問題に積極的に取り組む!効果的な対応マニュアルの作成方法と企業が取り組むべき対策を解説」の記事もチェックしてみてください。
5.カスハラから従業員を守るための具体的な対策
5-1.カスハラ対応力向上のための研修プログラムの実施
従業員のカスハラ対応力を向上させるため、定期的な研修プログラムを実施することが重要です。ロールプレイングを取り入れ、実際のカスハラ場面を想定した対応練習を行うことで、従業員の対応スキルを磨くことができます。また、カスハラ事例の共有や、対応のコツなどを学ぶ機会を設けることで、従業員の知識とスキルの向上を図ります。研修プログラムは、従業員のレベルに合わせて内容を調整し、継続的に実施することが効果的です。
5-2.メンタルヘルスサポート体制の強化
カスハラは、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。企業は、メンタルヘルスサポート体制を強化し、従業員の心身の健康を守ることが重要です。社内にカウンセリング窓口を設置したり、外部の専門機関と提携したりするなど、従業員が安心して相談できる環境を整備します。また、ストレスチェックの実施や、メンタルヘルスに関する情報提供なども効果的です。従業員のメンタルヘルスを守ることは、カスハラ対策だけでなく、組織全体の生産性向上にもつながります。
メンタルヘルスについて、以下の記事で詳しく紹介しています。
5-3.カスハラ対応事例の共有と情報交換の場の提供
カスハラ対応は、従業員一人ひとりの努力だけでは限界があります。組織全体で情報を共有し、ノウハウを蓄積していくことが重要です。カスハラ対応事例を社内で共有し、適切な対応方法について議論する場を設けることで、従業員の知見を広げることができます。また、他部署や他店舗との情報交換を促進し、ベストプラクティスを学ぶ機会を提供することも効果的です。
こうした取り組みを通じて、組織全体のカスハラ対応力を向上させることが可能となります。
6.カスハラから従業員を守るための具体的な対策
6-1.トップのリーダーシップと組織文化の醸成
カスハラ対策を成功させるためには、トップのリーダーシップが不可欠です。組織全体が一丸となって取り組む姿勢を示すことで、従業員に対しても強いメッセージを発信できます。また、コンプライアンスやメンタルヘルスを重視する組織文化を醸成することで、カスハラに対する抑止力が働きます。
6-2.早期発見と迅速な対応の重要性
カスハラ問題は早期に発見し、迅速に対応することが重要です。問題が放置されると、被害者のメンタルヘルスが悪化し、職場全体の士気にも影響を及ぼす可能性があります。カスハラ相談窓口を設置し、従業員が気軽に相談できる体制を整えましょう。
6-3.プライバシーへの配慮と信頼関係の構築
カスハラ対応においては、従業員のプライバシーを保護することが非常に重要です。適切な相談窓口の設置と、従業員との信頼関係を築くことで、被害を早期に発見し、迅速に対応することが可能となります。
6-4.継続的な取り組みとPDCAサイクルの実践
カスハラ対策は一度実施すれば終わりではなく、継続的な見直しと改善が求められます。PDCAサイクルを回しながら、事例のフィードバックをもとに対応策を改善していくことが、長期的な成功に繋がります。
7.カスハラから従業員を守るための具体的な対策
7-1.カスハラ問題発生時の初期対応の重要性
カスハラ対策を成功させるためには、トップのリーダーシップが不可欠です。組織全体が一丸となって取り組む姿勢を示すことで、従業員に対しても強いメッセージを発信できます。また、コンプライアンスやメンタルヘルスを重視する組織文化を醸成することで、カスハラに対する抑止力が働きます。
7-2.カスハラ被害者への適切なサポートの提供
カスハラ被害を受けた従業員は、精神的なダメージを受けている可能性があります。「あなたのせいではない」と声をかけ、寄り添う姿勢を示すことが重要です。必要に応じて、専門家によるカウンセリングや休養を促し、心身のケアを優先させましょう。また、カスハラ研修資料などを活用し、改めてカスハラへの理解を深め、同様の事態への対処法を学ぶ機会を設けることも有効です。企業全体で被害者を支える体制を構築することで、従業員の安心感に繋がります。
7-3.カスハラ加害者への厳正な処分と再発防止策の実施
カスハラ加害者に対しては、毅然とした態度で対応し、状況に応じてサービスの利用中止や取引停止などの措置を検討する必要があります。曖昧な態度や対応は、更なるカスハラを招き、他の顧客にも悪影響を与える可能性があります。また、再発防止策として、加害者に対してカスハラ行為に対する厳重注意や、場合によっては法的措置も視野に入れた対応が必要です。
8.まとめ
カスハラ対策は、企業が従業員の心身の健康を守るために不可欠な取り組みです。企業は、従業員が安心して働ける環境を整え、カスハラ問題が発生した際には迅速かつ適切な対応を行うことで、組織全体の生産性やCS向上に繋がります。
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